レーガン政権を強力に支持
「スター・ウォーズーゲーム」と嘲笑されたSDI
「世界大百科事典」第27巻より 平凡社
以上で明らかなように、MAD戦略に黄づいてソ連の核攻撃を牽制しようとするアメリカの戦略は、1980年代初頭の時点で完全に破綻を来していた。
この不利な状況の下では、グラハム将軍が発表したハイ・フロンティア構想は暗い夜を照らす一筋の光であった。
ところが、その戦略構想が革命的であるだけに、反対勢力も大変なものであった。
この構想が完成すると、ソ連がどれだけ多くの核兵器を持っていても、一発もアメリカに着弾させることができなくなるので、それらはすべて無用の長物と化す。
そうなれば、ソ連の世界赤化戦略は座礁してしまう。
それを避けるために、ソ連KGB(国家保安委員会)は死力を尽くして、手段・方法を選ばずハイ・フロンティア構想阻止運動に出てきた。
この時、ソ連が頼みとするアメリカの左翼言論、リベラル言論が恐るべき威力を発揮した。
ちょうど人気映画「スター・ウォーズ」が公開されて、スター・ウォーズ・ゲームが盛んに流行した時期である。
アメリカの言論界はハイ・フロンティア構想をスター・ウォしスーゲームだと嘲笑し、一笑に付すべき冗談にしてしまった。
彼らは現在の科学技術水準から見て夢のような話だと決め付け、(宇宙配備のレーザー兵器や宇宙防衛システムの開発に必要となる)天文学的数字の巨額予算のために、財政は破綻してしまうと主張した。
また環境保護主義者たちは、「まだ汚染されていない宇宙空間をごみ箱にするつもりか」と言って、抗議の声を上げた。
彼らの反対もさることながら、レーガン大統領の最大の苦悩は、ハイ・フロンティア構想推進に必要な予算を得るために、米議会をどうやって説得するかということであった。
米議会は民主党一色である。
共和党の大統領に協力する理由は何もなかった。
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